BLBSについて

Bryant-Li-Bhoj(ブライアント・リ・ボージ)症候群とは

Bryant-Li-Bhoj症候群(BLBS)は、2020年に初めて報告された比較的新しい希少な神経発達疾患です。
主に重度の発達遅滞や知的障害、体の発達の多様な症状を特徴とします。


1. 原因について

この疾患は、細胞内のDNAを束ねる役割を持つ「ヒストンH3.3」というタンパク質を作るH3-3A(H3F3A)またはH3-3B(H3F3B)という遺伝子の変化(病的バリアント)によって引き起こされます。

変異の性質と遺伝様式

多くの場合、両親にはその遺伝子の変化はなく、お子さんの代で初めて生じる「新規変異(de novo変異)」です。 

家族に同様の症状を持つ者がいなくても、誰にでも起こり得る疾患であります。そのため、次の兄弟姉妹が同じ疾患を持つ可能性は極めて低い(1%未満)です。

ヒストン

この丸いドラム缶のような形のものが、ヒストンです。

2. 主な症状

現在、確立された臨床診断基準はありませんが、以下の所見がある場合に本症候群が疑われます。

<臨床所見>

  • 軽度から重度の発達遅滞(DD)または知的障害(ID)。 
  • 筋緊張低下、小頭症または大頭症、頭蓋縫合早期癒合症、低身長。 
  • てんかん(全般性、部分性など多様)、痙縮。
  • 成人期における進行性の神経症状(発達段階の喪失、歩行悪化、側弯・前屈姿勢など)。
  • 眼科的異常(斜視、眼振)。
  • 先天性心疾患(心房中隔欠損など)、停留精巣。
  • 脳MRI所見: 皮質萎縮、後頭蓋窩の縮小。

<症状の出現頻度>

報告されている57人の症例に基づいた、主な症状の出現頻度は以下の通りです(※2026年2月現在:100人程の症例数になっている)

特徴(症状) 頻度(報告数/全数) 備考
発達遅滞・知的障害 100% (56/56) 多くは重度。独り座り、歩行、発語が難しい場合がある。
顔立ちの特徴 88% (50/57) 特定のパターンはないが、非特異的な顔貌の特徴が見られる。
筋緊張低下(ただし筋緊張亢進の場合もある
72% (41/57) 乳児期に多いが、成長とともに改善する場合がある。
眼科的異常 53% (30/57) 斜視が最も多く、眼振や皮質視覚障害も見られる。
てんかん(発作) 47% (27/57) 小児期に始まり、発作のタイプや頻度は多様。
低身長 39% (22/57) 逆に高身長となる例も稀にある。
小頭症 33% (19/57) 大頭症が見られる例もある。
頭蓋縫合早期癒合・頭蓋変形 32% (18/57) 特定の部位に限らず、頭の形に特徴が出ることがある。
先天性心疾患 19% (11/57) 心房中隔欠損(ASD)が最も一般的。
痙縮(手足の突っ張り) 19% (11/57) 主に足に見られる。
カンプトコーミア(腰曲がり) 100% (3/3) 成人期(20代)に立ち姿で腰を前方に屈める症状

そのほかに、ジストニア(不随意運動の一種)がみられる場合があります。
※参考論文(動画付き):PDFが開きます

  • 遺伝子検査: エクソーム解析などの包括的な遺伝子検査により、H3-3A または H3-3B 遺伝子の変異を特定することで確定診断となります。 
  • 画像検査: 脳MRIでは、後頭蓋窩(脳の後ろ側)が小さいことや、脳の表面の溝(皮質)の形成不全が見られることが一般的です。
  • てんかんを疑った場合は脳波検査が必要となります。

現在、確立している根本的な治療法はまだありませんが、症状に合わせた多角的なサポートが推奨されます。創薬の研究は、アメリカを中心に行われています。

  • 療育: 理学療法(PT)、作業療法(OT)、言語聴覚療法(ST)による発達支援。 
  • 外科的・内科的対応: てんかんへの抗発作薬、心疾患や頭蓋骨早期癒合への専門的治療、栄養摂取が困難な場合の胃ろう検討など。
  • 定期モニタリング: 成長、栄養状態、てんかん、視力・聴力、甲状腺機能などの定期的なチェックが必要です

4. 治療とケア


5. 予後について

寿命に関する詳細なデータはありませんが、複数の成人例が報告されており、現時点ではこの疾患そのものが寿命を制限するという証拠はありません。

早期からの適切な介入が、生活の質(QOL)の向上につながります。

出典: Bryant L, Bhoj E. Bryant-Li-Bhoj Neurodevelopmental Syndrome. GeneReviews® . (2023)